生活保護受給者の医療費について、政府は一部自己負担を求める方向で検討し始めました。
その背景には・・
生活保護受給者数は、高齢化の進展や2008年9月のリーマン・ショックなどをきっかけに急激に増加しています。
今年6月現在の生活保護受給者数は、約211万人。(そのうち参考までに例として、横浜市では約6万8,500人、宇都宮市では8千人以上、郡山市では約9万6千人が生活保護を受けています。)
この生活保護受給者数の増加に伴い、生活保護費も増加傾向にあることが以前から問題となっており、さまざまな議論がされてきました。
では、生活保護費とはいったいどんなものに使われるのか簡単に見てみると・・
①生活扶助 ②住宅扶助 ③教育扶助 ④医療扶助 ⑤介護扶助 ⑥出産扶助 ⑦生業扶助 ⑧葬祭扶助
の8種類に分類されます。詳しくは生活保護で受けられる補助をご覧ください。
生活保護費の具体的な金額で見ると・・
2010年度実績では、生活保護費の総額は約3.3兆円に上り、国の負担額は2.4兆円、その残りは地方自治体が負担するような形になっています。
この生活保護費うち、公費で生活保護受給者の医療費を全額負担するという仕組みとなっている「医療扶助」が約47%を占めており、金額では約1.5兆円にまで膨らんでいるのが現状です。
その現状から、全額公費で賄われている生活保護費の増加に歯止めをかけることを目的に、その扱いは、2013年度予算編成の焦点の一つとされており、財務省と厚生労働省が本格的な調整に入ります。
しかし医療費問題は、重い病気を患いながら生活に困窮している方が、病院にも行けないということになってしまう可能性もあるため、そういった方への配慮は忘れてはならない課題だとし、生活保護の医療費の負担額や見直しの手法については、財務省と厚生労働省を中心に具体策を詰めていくとしています。
10月22日に行われた財政制度等審議会(財務相の諮問機関)の財政制度分科会は、生活保護制度の見直しについて協議した結果、「生活保護受給者の医療費の一部自己負担を取り入れる」という案に、参加した委員から異論はありませんでした。
それに反して、23日の三井厚生労働相の記者会見では「病気の方の受診を抑制してしまう恐れがあるので、慎重な検討が必要」と医療費の一部自己負担に否定的な考えを示しました。
その一方で、「就労支援や不正受給対策について必要な見直しを検討したい」と発言し、生活保護制度自体の見直しは必要ということを示しています。
生活保護の医療費が一部自己負担になることによって、重い病気で働けない方がさらに治療が出来ない状態になってしまっては、生活保護の本来の目的である自立への道が、そういう方にとっては遠くなってしまうかもしれません。
そんな悪循環にならないためにも、本当に必要な部分に生活保護費を充てられるよう、不正受給対策に力を入れることが重要ではないでしょうか。