高齢になって収入が減ったり、足腰の自由が利かなくなってくると、子供と同居して生活をする方が増えてきます。
子供側としても、今まで育ててくれた両親への恩返しで傍で支えてあげたいと思うのが人情ですよね。
しかし、現実はそう甘くなく、両親の収入だけでは足りない生活費や医療費を子供側が負担しなくてはなりません。
ましてや受験を控えているお子様がいらっしゃる方や、住宅ローンもまだ完済していないとなると、その負担は大きく生活を圧迫していきます。
そんな時、同居していても両親だけ生活保護を受給させることのできる「世帯分離」という方法があります。
ここでは、どういった場合に世帯分離が適用されるのかをご紹介しています。
認められる?認められない?生活保護世帯分離のケース
生活保護とは基本的に世帯単位での受給になり、最低生活費より収入の方が高ければ生活保護は受けられません。
しかし、世帯分離が認められ、なおかつ収入の方が低ければ、例外的に世帯の一部を同居家族と分けて生活保護が適用されます。
ただし、国としてもおいそれと全部を認めてしまっては自立できない人を増やしてしまうので、安易に申請してもケースごとに厳しく審査されます。
では、認められる場合と認められない場合のどこが違うのか?過去の事例を比べてみましょう。
- 世帯分離が認められるケース(家族構成:夫・妻・子供)
- 「病気で手足にマヒがあり、介護の必要がある母親を引き取ったが、そのために妻がパートを辞め、収入が減り自分たちの生活がままならなくなった。」
→この場合、介護のために妻が仕事を辞めた事によって、収入の3分の1がなくなり、夫の稼ぎだけでは生活保護の月間基準額(175,170円:1級地-1)を下回ってしまった。そこへ母親の病院・介護費がかかり家計を圧迫しているので、経済的負担が大きいと判断。
世帯分離が認められ、一緒に住んでいても母親だけが生活保護の対象となりました。
- 世帯分離が認められないケース(家族構成:70代の夫と妻・40代の子供夫婦・子供)
- 「二世帯住宅で同居している年金暮らしの母親が寝たきりになった。生活の苦しくなった父親から生活費の援助を頼まれたが自分たちの生活もギリギリとても援助できない。」
→この場合、同居の子供側からすれば、両親だけを世帯分離して受給してもらいたいと思いますが、これだけの条件では難しいと言えます。
何故なら、寝たきりになったと言っても母親にはまだ年金という収入があります。もちろん父親も同様に収入があります。そして、子供側にも住宅ローンを支払えるくらいの収入があるため、こういったケースでは生活保護の世帯分離が認められない事が多いです。
世帯分離はあくまでも「自立する事を目標とするもの」
本来、生活保護における世帯分離という方法は、あくまでも自立する事を目標とするものであって、楽をするものではありません。
そういった観点から、世帯分離で生活保護を受給したいとお考えの方は、今一度ご自身の置かれている状況を確認し、それでもなお生活が苦しい、ままならないと判断された場合にのみ、お住いの窓口へご相談・申請するようにしましょう。
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