若くて健康で、一生懸命に就職活動すれば仕事に就けるはず。
そんな先入観をもとに、本人がどんな求職活動をしてきたのかをしっかり調べずに男性の生活保護の申請を却下した大阪府岸和田市に、2013年10月31日、生活保護の支給と60万円余りの賠償が命じられました。
月収三千円、それでも生活保護の申請を却下されてしまう
男性が生活保護を申請しに行ったとき、彼の所持金はたったの400円。どうしてそんなに苦しい状況になってしまったのでしょうか。
男性は中学を卒業してすぐに働きました。レストランの調理場やリフォーム会社の営業、テレビや携帯電話を組み立てる工場の派遣社員など。健康でやる気もあり、仕事がないとは考えもしませんでした。
しかし2008年2月のこと、岸和田市に住む義母のもとへ大阪都心部から移り住んだことがきっかけで状況は変わってしまいました。どんなに頑張って就職活動をしても、自分より若くて学歴のある人が採用されてしまうのです。仕事は選ばずに、400件以上の電話、40~50回の面接を受けたそうです。
男性がやっとの思いでみつけた仕事は、月収三千円にしかならない釣り具の部品を作る内職でした。妻も仕事を探しましたが、膝が悪くてなかなか見つかりません。
そんなとき、生活保護の申請を試みましたが、断られる一方。本やCDなど売れるものは全て売り払い、一張羅のスーツも手放すことになりました。就職活動に着ていくのは普段着で、散髪にも行けず、お風呂に入ることもできません。さらに、履歴書を買うお金も証明写真を撮るお金もなく、一通を使いまわしていました。
2009年7月、6回目にもなる生活保護の申請でようやく保護費の支給が認められました。現在では生活保護を受けながら、夫婦で新聞配達をして暮らしているそうです。
どうして本当に苦しい人に生活保護が支給されないの?
大阪府岸和田市では、男性が若くて健康で一生懸命に就職活動をすれば仕事はあるだろうという先入観をもとに申請を却下し続けていました。
生活保護の申請却下処分の取り消しなどを求めた訴訟では、その人が働けるかどうかだけではなく、学歴や資格の有無などの能力の程度まで考えるべきだと指摘しました。また、生活をしていくために働く努力をしているのであれば、他人から見てさらに努力する余地があったとしても、意欲があることは認めるべきだとしました。
男性は中学卒業で特殊な技能や資格を持っていないながらにも、ハローワークなどで一生懸命に求職活動をし、自力で生活をしていくための努力をしていました。大阪地方裁判所では「働く意思はあったのに働ける場所がなく、生活保護が必要だった」と結論づけました。
どうしてこんなに苦しい思いをしている人が生活保護の申請を却下されてしまうのでしょう。
どんな福祉事務所でも、生活保護受給者を多く抱えることは望ましいことではありません。申請の相談を受けても、働けると判断すれば申請を却下するでしょう。「働ける」という人の能力は、定規で測れるものではありません。ケースワーカーによってもその判断は変わるでしょう。
だからと言って、本人が働く意思を持っていることや、一生懸命に求職活動をしてきたことが認められないなんてあってはなりません。申請者が、どんな求職活動をしてきたかを調査し、本人の働く意思は認められるべきではないでしょうか。
男性は、「何度も自殺を考えた。生きるか死ぬかの生活に陥った人が救われる世の中になってほしい」と語っています。
生活保護の申請を考えている方へ。お役立てください。
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