これまで過去何度も自民党の生活保護法改正案について記載してきましたが、自民党は衆院選公約で生活保護費の「10%引き下げ」を明記しています。自民党の政権復帰に伴い、公約通り生活保護費の給付水準の引き下げは、実施される確立が高い情勢となっているようです。
年明けに本格化する平成25年度の予算編成の中で、生活保護費の給付水準の下げ幅を決める見通しであり、毎年数%ずつ削減していくといった「段階的な生活保護費の削減案」が有力視されているそうです。(財務、厚生労働省関係者による)
生活保護費の中で引き下げが検討されているのは、生活保護受給者の食費や水道光熱費に充てる生活扶助の基準額です。例えば1級地-1である神奈川県横浜市で支給額は60歳以上の単身世帯では、月額約8万円です。横浜市での一般の低所得者の生活費を上回っているといわれています。こういった低所得者の生活費よりも生活保護受給者に支給される保護費が多いといった逆転現象は、横浜市以外でも全国的に消費実態調査で指摘されています。
それによって、自民党は「所得水準、物価、年金とのバランスを踏まえて生活扶助の基準額を引き下げる」としています。
また、自民党のプロジェクトチームは、生活扶助の食費にあたる部分に対する対策として、食券などを想定した「現物給付」方式を提案しています。その生活保護法改正案とする自民党がまとめたものによると、食費の現物給付については各自治体が現物給付か現金給付のままにするのかを選択できるといった案も打ち出しているとのことです。
さらに、生活保護費全体の約半分を占める医療費については、安価なジェネリック医薬品(後発医薬品)の使用を生活保護受給者には義務化する、という案も提示しています。
(※)後発医薬品(ジェネリック医薬品)は、先発医薬品と治療学的に同等であるものとして製造販売が承認され、一般的に、開発費用が安く抑えられることから、先発医薬品に比べて薬価が安くなっています。
このため、後発医薬品の普及は、患者負担の軽減、医療保険財政の改善に資するものと考えられますが、現在のところ、日本では、後発医薬品の数量シェアは22.8%(平成23年9月の薬価調査に基づく集計値)であり、欧米諸国と比較すると普及がまだまだ進んでいません。
その理由のひとつに、医療関係者の間で、後発医薬品の品質や情報提供、安定供給に対する不安が払拭されていないということが挙げられています。
こうした状況を踏まえ、厚生労働省では「平成24年度までに、後発医薬品の数量シェアを30%以上にする」という目標を掲げ、後発医薬品の使用促進のための施策に積極的に取り組んでいます。
ただ、これらの生活保護費給付水準の引き下げや現物支給、ジェネリック医薬品の義務化などにおける、生活保護制度見直し案に対しては、受給者や一部野党の強い反発が予想されるので、自民党新政権はどこまで納得いく案として具体化できるかが鍵となりそうです。