衆議院総選挙の投票日が12月16日と迫ってきておりますが、衆議院選で生活保護の制度改革について、訴える政党が少ないのはなぜでしょうか?
生活保護を受給している人は、全国で213万人を超え、2012年度の生活保護費の給付総額は3兆7千億円にも達するだろうと見られています。それには、高齢化の影響もありますが、問題は働き盛りの生活保護受給者の申請が増え続けているうえに、いったん生活保護を受給すると、そこからの自立がしにくいという状況になっている方々がまだまだ多いということが挙げられます。
その背景には、生活保護受給者は、保険料や病院でかかる負担が免除(医療扶助)されているほか、家賃(住宅扶助)や生活費にあたる生活扶助により、生活保護費が支給されています。最低賃金より生活保護費支給額が高い地域もあり、それはそれで問題とされていますが、生活保護から自立した途端、全ての負担がのしかかります。
そういったことから、やっと生活保護の申請者に通り生活保護費を受給できるようにると、さまざまな免除(扶助)で生活できてしてしまう。そしてなかなか生活保護から抜け出せない為に、生活保護からの自立が進まないという悪循環に陥っているのです。
そんな生活保護の状態であるのに、各党の政権公約ではこうした働く意欲が揺らぐ要素を取り除く政策がほとんど見あたらないのです。
各党の中でも自民党が政権公約に掲げた「生活保護の給付水準の10%引き下げ」は目を引きます。生活保護に頼らないで働いている低所得者の生活水準と整合性をとり、不平等を無くすという意味で、この方向は正しいと考えられています。
しかし、生活保護費の支給総額のほぼ半分を占めるのは、受給者にかかる医療費なので、ここにメスを入れない限り、真の生活保護の制度改革は進みません。
日本維新の会は、維新八策には「医療扶助の自己負担制の導入」と明記していましたが、公約ではその文言がなくなったそうです。
民主、自民両党とも、窓口での自己負担については消極的です。生活保護受給者が病院窓口で一部でも負担するようになれば、病院側も生活保護受給者も意識が変わり、過剰な投薬や診療に歯止めがかかるはずだと考えられますが。
生活保護受給者にかかる医療費の抑制策として、自民党は公約に「後発薬の使用義務化」「診療報酬明細書の電子化によるチェック機能の強化」といった項目を並べたのに対し、民主党も「後発薬の使用促進」を掲げてはいます。
しかし、これらは国民全体を対象にした医療費抑制策であって、生活保護の受給者だけに適用するのはおかしいとの声も。
生活保護は本来、高齢や傷病などで本当に生活に困っている人のための最終的な糧となる生活手段です。生活保護という制度を維持するためにも、働ける受給者の自立を促す抜本的な改革が必要です。
神奈川県横浜市や、栃木県宇都宮市のように、就労支援を強化し、また生活保護を申請する前の段階として、生活保護申請者に就職先を優先して紹介するなどして、まず生活保護の申請者を減らし、既に生活保護を受給している方には、就労支援を積極的に利用してもらうといった実施が、これから益々重要になってくるでしょう。