生活保護ガイド

除外される子供達、生活保護引き下げで就学援助の枠狭まる

皆さんは「就学援助制度」をご存知でしょうか?
小中学校に通う子供達の内、約155万人が利用している制度で、対象の児童・生徒は年々増加傾向にあります。

そんな中、2014年度から、22都道府県の71市区町村で就学援助制度の援助対象を縮小させたことが、文部科学省の初の調査で分かりました。
これは、2013年8月に国が行った、生活保護基準額の引き下げに連動したものです。

それによって、多くの子供達が影響を受けました。しかし、全体の実に96%の1697市区町村は、過去の基準を適用するなどして、援助対象者を守りました。

「就学援助制度」って何?

経済的に困窮する家庭に地方自治体が学用品代、給食費、修学旅行費など12品目を補助する制度のことです。
この就学援助を受けられるのは、生活保護を受給する「要保護」世帯と、生活保護世帯に近い困窮状態と市区町村が認定した「準要保護」世帯です。

生活保護費引き下げによる影響

神奈川県横浜市では…
2012年度には約4万人の小中学生が就学援助制度を受けていた横浜市では、「9歳と12歳の小学生、40歳の父、36歳の母」の標準世帯では年収所得約358万円以下が対象でした。
しかし、2013年8月の生活保護基準額引き下げにより約344万円以下の世帯でしか受けられなくなりました。
横浜市は、「生活保護基準をもとに対象を決めている。連動させなければ、何を基準に決めているのか?という話になる。」と言います。
東京都中野区では…
2013年度に約3000人が就学援助制度を受けていた東京都中野区では、200人程度が対象から外される見通しです。
「7歳の小学生、36歳の父、32歳の母」の世帯で、対象は年間所得約335万以下でしたが、これより11万円引き下げられます。
中野区は「従来どおりの取り扱いを変えずに対応した。」と述べています。

そもそも、生活保護基準は「健康で文化的な最低限度の生活」という水準を具体化したもので、この基準を下げるという事は、最低賃金や国民健康保険料の免除、そして今回取り上げている就学援助など、さまざまな低所得者対策の基準に影響を及します。

そのせいで、今まで受けていた援助が受けられない。義務教育の機会均等を保障する重要な制度から、除外される子供達が出るのは、大変悲しい事ですね。

今後、さらに生活保護基準が下がると、自治体の持ち出しが増えます。自治体は、それを避けるために国の基準に従って厳しく対象を狭めることになっていきそうです。

未来を担う子供達の教育を支える就学援助制度。その本来の在り方を皆で考えていけたら良いですね。

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