生活保護状況 栃木県では去年過去最多。就労支援対策で歯止めが掛かるか!

全国で生活保護を受給している人数は2011年7月時点では、厚生労働省によると205万495人という過去最多を更新しています。それまで1951年度(月平均)の204万6646人が最も多かったのですが、長引く不況の影響で60年ぶりの生活保護者数の記録の更新となっています。

栃木県でも生活保護を実際に受給している人数は2010年では1万9075人、2011年では1万9787人と確実に増加しており、2万人に迫る勢いです。生活保護世帯数は1万4638世帯と過去最多を更新し、栃木県医事厚生課は「東日本大震災以降、景気が不透明になり、生活保護受給者数の増加に歯止めが掛からない状況が続いている」と懸念。

栃木県の生活保護受給者数は、戦後の混乱が続いた51年度の3万1932人が最多となっています。
しかしその後、工業団地の造成などによって就労環境にも恵まれ、栃木においては生活保護を受給する方が少ない県だったそうです。1993年度には5899人にまで生活保護者数が減りました。

それが一転して、生活保護者数5899人という数字を底に栃木でも増加し始め、2008年秋のリーマンショックを機に失業者による生活保護の受給で一気に増加しました。それ以来、栃木県でも右肩上がりの状態で生活保護受給者数は推移してきています。

そして、栃木県の生活保護世帯数は1952年度の1万689世帯が最多でしたが、2009年度に1万2044世帯となり57年ぶりに最多を更新しました。更に毎年増加し続け2011年度にはついに1万4000台後半という生活保護世帯数に。

栃木県内の生活保護を受けている世帯を類型別で見ると、最も多いのはやはり「高齢者世帯」で5774世帯、続いて「傷病者世帯」3912世帯、次いで働き盛りの年齢層である世帯が2469世帯となっています。

栃木県も含め、日本全国においても言えることですが、高齢化に加え、東日本大震災や欧州経済危機などの影響で、現在も景気が不透明です。「働ける人が職を失い、生活保護を受ける人が増えている。雇用環境は不安定な状況が続いており、生活保護受給者数、世帯数は増加傾向が見込まれる」と言われています。

東日本大震災や福島第一原発事故によって、生活保護を受給し始めた世帯は全国で939世帯となっており、特に栃木ではそのうち12世帯が隣の県である福島県からの避難者らが多くを占めており、栃木県での生活保護世帯数の増加の原因のひとつになっています。

栃木県の中でも生活保護費受給額で最上位をしめるのは、宇都宮市で1278万4025円です。2位は日光市で145万3898円となっています。
宇都宮市の人口は、51万1739人であり、栃木県内でも一番多いのですが、受給される生活保護費の基準も県内の他の地域より高いため、より多くの生活保護費が使われています。

その生活保護受給者に支給されている地方自治体管轄である保護費の財源は、大部分(およそ4分の3)が地方自治体に対して交付される国庫負担金となっているため、栃木県の中だけの問題ではなく、つまり日本国民全体で全国の生活保護費を養っているのです。

ですから、生活保護受給者数をこれ以上増加させないためにも、それぞれの自治体で生活保護受給者数を減らす取り組みが予定されていますが、栃木県宇都宮市では民間業者との契約のもと生活保護受給者の就労支援対策が行われているので、一刻も早く働ける年齢層の世帯の方の就職を増やすことにつなげて欲しいと思います。結果、増加し続ける生活保護世帯数に歯止めをかけられることを期待します。

生活保護受給者の就労支援強化、宇都宮市は民間委託 (栃木)

生活保護受給者を就労支援するために様々な強化対策が、それぞれの市で行われています。

先日は横浜市の3区役所内にハローワーク出張所を来年4月に設置予定というニュースを掲載しましたが、その他の都市でもそれぞれの生活保護受給者への就労支援対策が考案されており、既に実施されている例もあります。

栃木県宇都宮市では9月の時点で生活保護受給者の自立につなげるため、就労支援を民間に委託するという策に既に乗り出しています。9月12日の宇都宮市議会一般質問で、遠藤和信議員(改革)の質問に手塚英和保健福祉部長が明らかにしています。
従来の生活保護に対する支援策に加え、さらに働ける意欲のある受給者に就労支援を強化していくという宇都宮市の態勢がみえます。

栃木県医事厚生課によると、生活保護受給者の就労支援への対策で、民間事業者に業務委託した形での就労支援は、栃木県内自治体で初めてとのことです。

宇都宮市では、栃木県緊急雇用創出事業という補助金を活用し、前もって宇都宮市内の民間職業紹介事業者と「生活保護受給者就労支援」の業務を委託するといった契約を結んでいます。

その内容とは、働く能力のある生活保護受給者を対象に、キャリアカウンセラーによる職業相談や求人情報・職場紹介、就労後の職場定着支援などを実施しています。
宇都宮市の生活福祉課によると、生活保護受給者が働く意欲を喚起できるように導き、仕事へのマッチングなど、出来る限りひとりひとりに合うように広範囲な支援をし自立につなげていくとして、生活保護受給者への支援に力を入れています。

横浜市では、国の機関であるハローワークとの協力にて生活保護受給者の就労支援の強化対策に、栃木県の宇都宮では民間業者との協力による就労支援実施にと、生活保護受給者を自立へ導くために横浜市も宇都宮市も市だけの働きだけでなく外部との連携によって強力な支援体制を取ることによって、しっかりと生活保護受給者を支えていくことができるのではないでしょうか。

生活保護受給者のひとりひとりの就労への意欲次第という部分もまだまだ問題はありますが、ひとりでも多く生活保護から自立し、働く場があるものなら働きたいという意欲がある方を取りこぼさず、また就労意欲がなかった生活保護受給者の方でも、そういう宇都宮市での就労支援の取り組みによって、意欲を取り戻す方が増えるのではないかとあたたかく見守りたいところです。

生活保護受給者の就労支援強化 横浜市がハローワーク職員の派遣を要請

神奈川県横浜市では、伸び悩む生活保護受給者の自立へ向けた就労への相談数や就職数への対策として、ハローワークとの連携を強化することが重要としており、ハローワーク職員の派遣を8日に国に要請しました。

生活保護受給者の中には、区役所の窓口で就労支援専門員がハローワークへ行くように促しても、「遠い」という理由で行きたがらない相談者も少なくありません。
そういったことからも、区役所内の一角にハローワーク出張所を設置することが予定されており、まずは横浜市内の3区役所(鶴見、中、瀬谷)へのハローワーク職員の派遣を求める提案書を提出することが7日に分かりました。

横浜市の関係者などによると、区役所へのハローワーク職員派遣要請の提案書では、まず始めに設置する横浜市の3区はハローワークが遠かったり、生活保護受給者が多い地区であるなどの状況から、横浜市内の他の区よりも先行して実施することを求めているそうです。

国の機関であるハローワークと横浜市の区役所との強い連携の確立により、新たな窓口である仮称ジョブスポットの開設が実現化されれば、生活保護受給者や生活困窮者、またはひとり親の方を対象に、ハローワーク職員と区の就労支援専門員らが一体的に職業紹介などの就労支援が出来るとしています。

横浜市の3区役所のハローワーク出張所は、2013年4月からスタートさせる予定で、随時横浜市内の全18区での開設を目指します。
まず、来年4月からはハローワーク職員を3人ずつ区役所に配置し、ハローワーク職員と就労支援専門員の協力のもと、生活保護受給者などへの就労支援をスタートさせるとしており、2013年夏頃までには求人情報が検索できるハローワークのパソコン端末の設置の導入も目指すとのことです。

現在、横浜市に住む方が利用するハローワークは5ヶ所(川崎市川崎区、横浜市中、港北、戸塚、金沢区)しかなく、それらで横浜市内の18区を賄っています。
そういった現状からも、横浜市の各区役所内にハローワーク出張所が設置されれば、生活保護受給者または生活保護を受給する前の申請者などは、彼ら専用の就労の相談の場が利用できるので、足踏み状態の生活保護受給者の就労の相談者数や、実際の就職数の増加にもつながるのではないでしょうか。

そういった横浜市の就労支援の強化が、生活保護受給者や生活保護を申請しようと思うほど生活に困っている方々に働ける場を与え、自分の力で生活を成り立たせるチャンスを与えることになり、将来的に横浜市の生活保護受給者数の減少に向かっていくことに期待したいです。

神奈川県 生活保護受給者への就労支援、足踏み状態

生活保護受給者への就労支援が行われていますが、神奈川県労働局の調べでは、県内の相談者数と就職者数はここ半年で年間目標人数の約3割にしかなっていないとのことです。

厚生労働省の就労支援事業とは、高齢者や障害などの理由がある方は別にして、就労意欲がある生活保護受給者を対象とし、生活保護からの一日でも早い自立を目指しています。
各自治体の福祉事務所と連携して、同事務所が生活保護受給者本人の意思のもと、ハローワークに取り次ぎ、就職につなげていくという仕組みです。

しかし神奈川県労働局では、本年度は3010人の生活保護受給者から相談を受け、そのうち1430人を就職に結びつけることを目標にしてきましたが、今年4月から9月までに実際の相談者は929人であり、そのうち就職したのは497人でした。それぞれ、目標としていた人数の3割程度という結果にとどまっている状態です。

その対策として、ハローワーク出張所の開設による生活保護受給者とハローワークの距離を近づけることで、通う時間と就労意欲のロスをなくし、生活保護の相談者や受給者などへの職業紹介を強化するために、9月時点で、神奈川県横浜市では、市内の3区役所にハローワークの出張所を開設するよう国に求める方針を固め、今後は全18区への開設を目指しています。

さらに、横浜市以外にもハローワークの出張所を市役所や区役所などに開設する取り組みは全国に広がっており、神奈川県内では、相模原市がことし4月から就職支援センターに開設。綾瀬市は10月から市役所1階に開設。

神奈川県労働局職業対策課は、上記の取り組みを無駄にしない為にも「対応する生活保護受給者が就労意欲があるかどうかの線引きは福祉事務所の担当者によって違うが、就労意欲がある人を送り出してもらっている。相談人数を増やす目的で、高齢だったり障害があったりする方を取り次いでもらっても、ハローワークのサービスが生かせない」と述べており、相談者・就職者の数値目標達成だけを目指すことには慎重に捉えているようです。

一方で、「支援対象者を柔軟に捉えてもらい、まずはハローワークに取り次いでもらうことも必要」とも。
相談者数からみた就職者数は半数を超えていることもあり、まずは相談に結びつけてもらおうと、福祉事務所からハローワークへの交通費がかかる場合は同事務所からの要請次第でハローワーク職員が同事務所に出向くケースもあるそうです。

また、「早め早めに生活保護受給者を就労支援していかないと、受給期間が長くなるほど就労意欲がそがれてしまうため、福祉事務所にさらに協力を要請していく」と話しています。

こういった協力体制にある横浜市の取り組みが、結果的に生活保護受給者の相談者数、就職者数の増加に繋がっていくことを期待したいことろです。

生活保護受給前に就労支援を。 申請者や相談者に働く場を。 

10月26日厚生労働省は、生活保護受給前の申請者や相談者に対して、2013年度から本格的な就労支援を実施する方針を固めました。

まずは、生活保護の申請が多い地方自治体の福祉事務所に求人事情に詳しい専門相談員を常に配置し、なるべく生活保護を受給しなくてもいいよう働く場の提供に乗り出すという形です。

就労支援は、これまで生活保護受給者に実施してきました。
しかし、近年増加している働ける世代の方の生活保護の受給をこれ以上増やさないためにも、就労支援の対象を生活保護受給前の申請者や相談者まで拡大。

また、就労支援は生活困窮者の自立支援策を柱とする「生活支援戦略」の一環で、来年度予算の概算要求に関連経費100億円を盛り込んでいます。

※就労支援における「生活支援戦略」の内容とは・・・
◇経済的困窮者・社会的孤立者の早期把握、民間協働による「包括的」かつ「伴走型」の就労・生活支援態勢
・総合的な相談窓口による相談・支援
・NPO、社会福祉法人、民間企業、ボランティア等との連携・ネットワーク構築
・自治体とハローワークが一体となった就労支援の抜本強化

  

◇多様な就労機会の確保
・「中間的就労の場」の提供

    

既に生活保護受給者には現在、上記の内容に基づき、自治体職員がハローワークに同行して職探しを後押ししたり、履歴書の書き方を助言したりする支援事業を行っています。
来年度からは、生活保護受給前の申請者や相談者にも同様に、就職につながるよう支援を行っていくとしています。

2015年度には、生活困窮者を支援するための支援体系を確立し、経済的に困窮している方や、社会的に孤立している方をそのような状態から救う事例を増加させ、一人でも多くの方に生活保護を受給しなくても就労できるようにしつつ生活保護受給者の減少につながることを中間目標としています。

さらに、2020年までには、生活保障するとともに、失業時をリスクに終わらせることなく、新たな職業能力や技術を身につけるチャンスに変える社会の実現を目指します。

ひとりでも多くの生活保護受給者や申請者などが、こういった就労支援事業の基で、新たな知識や能力を得、また社会に参加することで就労への意欲の醸成につながることを期待します。

不公平感が募る生活保護制度。生活保護費と最低賃金との逆転現象、許せるか?

生活保護費」と「労働者の最低賃金」や「年金」との逆転現象が、働き盛りの若者やまじめに長年年金を払ってきた高齢者の間では、生活保護受給者や制度に対して「こんな不公平感はありえない」という遣り切れない思いが渦巻いています。

最低賃金」とは…
最低賃金法に基づき、国が都道府県ごとに定めている賃金の最低限度の時給です。
その最低限度の賃金で、生活保護を受給せずにコツコツ働き生活している方もいる中、生活保護受給者のほうが多い生活保護費をもらっているといった「逆転現象」地域が拡大しています。

生活保護費が最低賃金を上回る「逆転現象」とは…
生活保護費と最低賃金で働く方の可処分所得をそれぞれ時給に換算した場合、生活保護費のほうが最低賃金で働く方の可処分所得を上回る(乖離する)現象です。
※可処分所得・・労働の対価として得た給与やボーナスなどの個人所得から、支払い義務のある税金や社会保険料などを差し引いた、残りの手取り収入のこと。

2011年度の地域別最低賃金引き上げ後では、「逆転現象」は北海道、宮城県、神奈川県のみで生じていました。しかし、2012年度では、青森県や千葉県など11都道府県に拡大したことが明らかとなっています。
(2012年7月の厚生労働省、中央最低賃金審議会の「目安に関する小委員会」における「生活保護と最低賃金」と題した資料による。)

厚生労働省が示した資料によると…
北海道(乖離額30円)、青森県(同5円)、宮城県(同19円)、埼玉県(同12円)、千葉県(同5円)、東京都(同20円)、神奈川県(同18円)、京都府(同8円)、大阪府(同15円)、兵庫県(同10円)、広島県(同12円)の11都道府県に拡大しているとされています。

この「生活保護費と最低賃金の逆転現象」への対策として、平成24年10月に順次、最低賃金の引き上げが行われています。
しかし、大阪、東京、北海道などでは来年度以降に逆転現象問題の解消は先送りにされているようです。

参考までに、平成24年10月の地域別最低賃金改定状況を地域抜粋で見てみると、次のようになっています。

  • 栃木県  697円 →705円
  • 茨城県  690円 →699円
  • 千葉県  744円 →756円
  • 神奈川県 818円 →849円
  • 福島県  658円 →664円

逆転現象がある県も辛うじて逆転までは達していない県も含め、上記のような少ない最低賃金で働き、その中から更に年金や保険料を払いその残りで生活している方に比べると、最低賃金を上回る生活保護費(生活扶助)を受給し、その上医療費や介護費は無料などという条件のもとで生活している方のほうが裕福といったことが現実に起きています。

それはまじめに働く方にとっては不均衡の何ものでもありません。
通常は退職して自力で収入を得ることが難しくなった高齢者が、生活保護を受給することが多いのですが、近年では比較的若い世代で失業を理由に生活保護を受給し、少ない賃金のアルバイトやパートで働くなら「働かないで生活保護を受給して暮らしたほうが得」という考えを生み、結果として生活保護受給者の増加を招く一因になっていると言えます。

本来、「入りやすく出やすい」を目指した生活保護制度の設計は、今や「入りやすく出たくない」といった「もらい得」という”モラル・ハザード”(倫理の欠如)を招いてしまっているのです。

それでも、生活保護に頼ることなく、社会の一員としてコツコツまじめに働くことを尊いと考え、生活保護費よりも少ない年収で生活している方ももちろんいます。

そういった「収入が少なく生活が困窮していても、自力で働き生きてこその価値」を大切にし一生懸命働き頑張っているモラルの高い方々が、生活保護費の逆転現象のように納得のいかないような事態は打破しなければなりません。
生活保護の不正受給は論外ですが、不正とまではいかなくても「生活保護費のもらい得」を何とも思わず保護費を受給しのうのうと暮らしている、そんな不公平が起こらないように最低賃金の引き上げとはまた別に、早急な生活保護制度の抜本的な見直しに期待したいところです。

生活保護見直し。医療費、一部自己負担に?政府検討

生活保護受給者の医療費について、政府は一部自己負担を求める方向で検討し始めました。

その背景には・・

生活保護受給者数は、高齢化の進展や2008年9月のリーマン・ショックなどをきっかけに急激に増加しています。
今年6月現在の生活保護受給者数は、約211万人。(そのうち参考までに例として、横浜市では約6万8,500人、宇都宮市では8千人以上、郡山市では約9万6千人が生活保護を受けています。)
この生活保護受給者数の増加に伴い、生活保護費も増加傾向にあることが以前から問題となっており、さまざまな議論がされてきました。

では、生活保護費とはいったいどんなものに使われるのか簡単に見てみると・・
①生活扶助 ②住宅扶助 ③教育扶助 ④医療扶助 ⑤介護扶助 ⑥出産扶助 ⑦生業扶助 ⑧葬祭扶助
の8種類に分類されます。詳しくは生活保護で受けられる補助をご覧ください。

生活保護費の具体的な金額で見ると・・
2010年度実績では、生活保護費の総額は約3.3兆円に上り、国の負担額は2.4兆円、その残りは地方自治体が負担するような形になっています。

この生活保護費うち、公費で生活保護受給者の医療費を全額負担するという仕組みとなっている「医療扶助」が約47%を占めており、金額では約1.5兆円にまで膨らんでいるのが現状です。

その現状から、全額公費で賄われている生活保護費の増加に歯止めをかけることを目的に、その扱いは、2013年度予算編成の焦点の一つとされており、財務省と厚生労働省が本格的な調整に入ります。

しかし医療費問題は、重い病気を患いながら生活に困窮している方が、病院にも行けないということになってしまう可能性もあるため、そういった方への配慮は忘れてはならない課題だとし、生活保護の医療費の負担額や見直しの手法については、財務省と厚生労働省を中心に具体策を詰めていくとしています。

10月22日に行われた財政制度等審議会(財務相の諮問機関)の財政制度分科会は、生活保護制度の見直しについて協議した結果、「生活保護受給者の医療費の一部自己負担を取り入れる」という案に、参加した委員から異論はありませんでした。

それに反して、23日の三井厚生労働相の記者会見では「病気の方の受診を抑制してしまう恐れがあるので、慎重な検討が必要」と医療費の一部自己負担に否定的な考えを示しました。
その一方で、「就労支援や不正受給対策について必要な見直しを検討したい」と発言し、生活保護制度自体の見直しは必要ということを示しています。

生活保護の医療費が一部自己負担になることによって、重い病気で働けない方がさらに治療が出来ない状態になってしまっては、生活保護の本来の目的である自立への道が、そういう方にとっては遠くなってしまうかもしれません。
そんな悪循環にならないためにも、本当に必要な部分に生活保護費を充てられるよう、不正受給対策に力を入れることが重要ではないでしょうか。

生活保護費めぐる問題。就労支援の1.2億円分が成果無し。

生活保護受給者が過去最多となっており、その生活保護費をめぐる問題があとを絶ちません。

そんな中、国や地方公共団体の会計などの検査や監督またはその適正化を図る「会計検査院」は19日、生活保護制度のひとつでもある「就労支援」のための保護費約1億2千万円が、生活保護受給者が自立する為の資格取得や就職といった成果につながっていないという事実を指摘しました。(2009年~2010年度に支給されていた分)
また、一部では、計約9500万円をも多く生活保護就労支援として受給者に支給していたことも判明し、厚生労働省に改善するように求めました。

そもそも生活保護費とはいったいどんなものがあるのか?
詳しくは生活保護の種類をご覧ください。

さて問題になっている就労支援は、生活保護では「生業扶助」というものの中に含まれますが、就職のための研修や教材費、資格取得の費用に充てられる「技能習得費」がまさにこの就労支援費になります。

技能習得費は2009年度は1人あたり原則として年間7万円までで、事情に応じて一部で38万円まで認められていました。それをトータルで見てみると、2009年~2010年度には東京や大阪など23都道府県で約6億9千万円が生活保護受給者に支給されていています。
検査院は、その生活保護の「生活扶助の技能習得費」をくまなく調べた結果、そのうちの260自治体の2849人への生活保護費(技能習得費)支給に問題を見つけたとしています。その額が1億2千万円にも。

問題となっている嘘の技能習得費の主な例を見てみると・・・
生活保護受給者が資格試験を受けるなどと言って、生活保護費(技能習得費)を受け取りながら、実際は資格など取っていないといった例は825人。
また、「車の免許を取る」という理由で約31万円を受け取ったのにもかかわらず、教習所には2日しか通っていなかったり、「簿記検定試験を受験する」と言って約10万円をもらいながら約8万5千円を試験代以外の私用に使ったりしたということがあげられました。

生活保護で支給される最低生活費よりも低い所得にもかかわらず、生活保護を受給せず自分の力で生活している方もいる反面、生活保護受給者が技能習得費を活用して一日も早く自立した生活を目指すどころか、嘘をついて少しでも補助金をもらおうというようなことが今後増えないようにしていただきたいと思わざるを得ません。

不況や生活保護受給者のモラルの問題もありますが、生活保護を受給しないで頑張っている方たちのためにもせめて成果の出ないような生活保護費は厳しく管理し、改善していって欲しいところです。

生活保護不正受給させない為の対策議論

生活保護制度の抜本的な見直しを議論している厚生労働省の専門家会議が10月17日に開かれました。

その議論の内容とは・・
年間120億円を超えている生活保護不正受給を減らすために、生活保護申請時や受給時の審査をより厳しくして行こうとする対策の強化に賛成する意見が出た一方、生活保護を本当に必要としている方への支援を閉ざさないよう、不正受給への対策を慎重に行わなければいけないという意見も出ました。また、ひきこもりの方などが働けるよう簡単な作業から始められる「中間的就労」については、貧困ビジネスとして悪用されないよう規制が必要だという意見も。

その背景とは・・
生活保護の受給者は今年6月には211万人超えという過去最多を更新。
今年度の生活保護費の総額は何と、3兆7000億円を超える見通しとされています。

増え続ける生活保護受給者に歯止めをかけなければならないのですが、その中でも生活保護の不正受給は去年3月までの1年間におよそ129億円に上回っていることが大変大きな問題です。
生活保護不正受給への対策については次のとおり検討されています。

生活保護の不正受給への検討されている対策案
「自治体の調査権限」の強化
①生活保護申請時の資産や収入の状況に加えて、受給時の就労や生活保護費の支出状況まで調査できる権限を自治体に与える。
②働けるのに働く意思がない方には厳しく対応し、2回生活保護費が打ち切られた後の3回目の申請では、審査を厳しくする。

生活保護の不正受給の増加により、本当に生活に困窮している方が生活保護を受給できなくなるということは避けなければなりません。
厚生労働省の専門会議は今後も生活保護制度の見直しについて議論を重ねたうえで、年内をめどに報告書をまとめることにしているとのことですが、生活保護を必要としている方が本当の意味で救われるためにも、少しでも不正受給を減らす対策を真剣に一刻も早く行っていただき、私たち国民が納めた税金が本当に困った方への支援に回ることを願います。

生活保護を受給している在日外国人は適用外。年金保険料全額免除に。

生活保護受給者は年金保険料全額免除。生活保護の在日外国人は適用外に。

生活保護費の増加が続いていますが、ここ最近生活保護受給者に厳しい目が向けられています。
そんな中「日本年金機構」は、「生活保護を受給する在日外国人は国民年金保険料の一律全額免除の対象ではない」という見解を示しました。

今まで国民年金保険料は、生活保護を受給している方は「法定免除」が適用され、日本人も在日外国人も全額免除になっていました。それを、年金機構の地方組織である年金事務所(特に外国人が多く住む横浜市等)は、生活保護受給者の在日外国人においても自治体が日本人と同様に扱うことを認めてきました。

しかし国民年金機構は、地方組織である年金事務所からの照会に対し8月10日付で次のような回答をすることで、生活保護の在日外国人の年金保険料全額免除を適用外とすることを明らかにしました。

(1)困窮する永住外国人らには日本国民に準じて生活保護を給付しているが、外国人は生活保護法の対象ではない
(2)国民年金法上、法定免除となるのは生活保護法の対象者なので、外国人は該当しない

全額免除を適用しない代わりに、申請すれば所得に応じて免除の割合が決まる保険料の「申請免除」というもので生活保護在日外国人に対応します。つまり、所得によっては保険料の一部支払いを求めるものになります。
例えば、一人暮らしの場合、前年の所得が57万円を超えてしまうと、年額約18万円の年金保険料は全額免除にはならず一部免除で残りは支払わなければならないということも。

厚生労働省は、申請免除でも実際は全額免除される方が多いとの見方を示していますが、一部しか免除されず結局保険料を支払えなかった場合、無年金になってしまう心配が出てきます。

年金機構は、在日外国人の保険料免除について「誤ったところは正していく。既に法定免除とした件は、全国的に実態を調査した上で対応を検討する」(国民年金部)と説明しています。

在日外国人を支援する団体からは、生活保護法の国籍条項の撤廃を求める声も出ていますが、政府は生活困窮者への支援策や生活保護制度の在り方を検討し、論点に加えることも考えたいとしています。

しかし日本各地域で税金も納めながら同じように暮らしている在日外国人が、生活に困窮した時に日本人と違う対応を受けるのは差別に等しく、現時点では日本人と同様に全額免除にならないのなら、せめて外国人も生活保護受給時には法定免除の対象になるよう生活保護の仕組みを見直して欲しいものです。